桑原裕子さんインタビュー
桑原裕子さんは東京都出身。劇団KAKUTAを主宰しており、俳優としてだけでなく、劇作家・演出家としても高い評価を得ています。先日、栄えある第70回読売文学賞「戯曲・シナリオ賞」を受賞されました。
― 役名を教えてください。
高田ちほという役です。舞台となる宮崎の人間ではなく、北九州からわけあって宮崎のブーブーキングに働きに来ている看護師です。
― どんなキャラクターですか。
パブリックで思われている私ってこんな感じなんじゃないかなって(笑)。こういう役をあてられることが多いかもしれないですね。気が強くて、逞しくて、スナックで働いている女性って、わりとよくやらせていただくかもしれないですね。
―過去にも似たようなキャラクターをされたことが?
そうですね、キャバレーで働いているとか、男で痛い目にあっても挫けず道を切り拓くみたいな。今回の役は北九州からやってきた女性なんですけど、北九州の土地柄と私の出身である町田市が、ちょっと似てるので感覚が似ているのかもしれません。実は宮崎は初めてで、同じ九州でもこんなにも県民性や性格が違うなって思いました。大らかでゆったりしていて優しい宮崎に対して、今回の役は物事をハッキリさせたい、うだつのあがらない男は嫌だという北九州らしさのある女性ですね。
― 初めての宮崎はいかがですか。
以前、九州男児について調べたことがあって、女性に対して3歩さがって歩くことを求めたり、台所は女性に任せるといったイメージがありました。そういう九州男児について、苦く思っていたりしたんですけど、それに反して宮崎ってそういう感じがないですね。東京で知り合った宮崎出身の男の人たちが、優しくて大らかで開放的で、悪くいえばのんびりしすぎててマイペースで、とぼけてるみたいな印象の方が多かったんですけど、今回実際に来て、これ県民性だったんだ、ってびっくりしましたね(笑)。でも、すごく私が憧れる人柄だったりしますね。私は仕事柄かもしれませんが、何事に対しても掘り下げて追求して、みたいなことをしがちで。でも、宮崎の人たちは「そんなにカリカリすることないじゃないか」って、こっちが怒ったりしているのが馬鹿らしくなってくるみたいな感覚がありますね。なんでこんなに怒っていたんだろうって、ふと気付くと優しい気持ちになっていて。偏った見方かもしれないんですけど、その人はその人って感じで、ありのままをあっけらかんと受け入れる、そんな印象が宮崎の人たちにはありますね。
― 作品の中で描かれている宮崎はどうですか。
戌井さんがすごくお調べになってお書きになった作品なんだなって感じました。宮崎で、タクシーの運転手の方やコンビニのおじさんとかに会うと、「これ作品に描かれている通りだな」って符合していくところがあってすごく面白いですね。わりとそのまんまじゃないかって感じがあって。その分、観に来る宮崎の人たちにとっては、普通のことなので、そこをどうやったら面白く魅せられるのかなって。あらためて自分たちのことを、「あるよねー」ってところで止まっちゃうと面白くないから、もう少し踏み込んだ面白さを出したいです。
― 稽古はいかがですか。
戌井さんの作品はテンポ良く会話が進んでいくけれど、山あり谷ありじゃなくて、すごくなだらかに進んでいくんです。でも、実は「これ事件じゃない?」っていうようないろんなことが起きているんですね。そういう中にも結構掘り下げると社会的に問題なこととかが書かれていて、ともするとスルーしてしまうから、そこを演出の立山さんが立ち止まって考えるようにしてくれていて、私も見逃さないでやれたらなって感じでやっています。
― 最後にお客様に一言、お願いします。
大らかで、優しくて、のんびりしていて……そんな宮崎の人たちのなかにも、すごくしんどい思いをしていたり、嫌なことがあったり、面白くなくてくさくさした気持ちとか、何かしら抱えていたりすると思うんですよね。この芝居を観に来てもらって、そんな自分の悩みが軽くなる感じがしたりとか、しょうがねぇなって笑えたりとか、気付くと気分が軽くなっている、そんな時間になったら良いんじゃないかなって思っているので、ぜひ来ていただきたいです。
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